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  • 執筆者の写真宇野 重起

院外経営企画室とは?


「院外経営企画室」と言われてもピンとこないかも知れない。

単語としての意味は分かるが、一体何をするためのものなのか?

今回は、この「院外経営企画室」の話題に触れていきたい。


電子カルテや医事コンピューターシステム(以下、医事コン)が当たり前のように導入されてきている医療業界であるが、多くの情報が紙ベースから電子媒体ベースに切り替わりつつある。と同時に多くの院内データを作り出すことも出来るようになった。

私が、まだ医療機関で勤務していた頃は、やっと電子カルテの導入が始まるタイミングであり、まだまだ電子カルテ前の「オーダリングシステム」全盛の頃であった。

当時、救急の現場にいて、医師や看護師が病院上層部が出席する会議に出ると、上から色々言われて反論も出来ない…という話をよく耳にしていた。PC好きだった私は、ある病棟の入院患者のデータベースを作りたいと考え、自身のPCを持ち込みエクセル、アクセス、桐等で色々データベースを試作した。夫々にメリットとデメリットがあり、使い勝手も違っていた。最終的に、汎用性、集計能力等を考え、エクセルでのデータベースの作成を決め入力作業に明け暮れる毎日であった。まだDPCが導入される前の段階で、今のようなMDC分類もなかった時だけに、自身で多くの項目を設定した。中でも、疾患を分類する上で、患者のメイン疾患を分類することが必要だと感じた。脳神経?循環器?消化器?外傷?等々15程度の疾患区分を設定し、後から分析する際に作業が楽になるように設定した。そのような項目も日に日に増え、稼働年度のデータベースを入力しながらも過年度分のデータを遡って入力も行った。過年度分4年+当該年の計5年分のデータが蓄積された頃に、今まで貯めてきた分析作業に着手した。男女別、年齢階層別、疾患区分別(疾患区分とは、疾患を今のMDCのような分類を自作設定した)、外傷重症度(AIS)別、在院日数別、診療科別、手術別等々多くの項目を設定した分析を行った。平均値、中央値、相関、多変量解析等、診療報酬改定時には、シミュレーションも行い、現状維持で推移するとどうなるか?等々、日々データ入力と分析に明け暮れた。その結果を、当時可愛がってもらった教授に見せた。絶句であった。「この資料があれば、院内の多くの会議で上からの一方的な物言いに反論できるだけではなく、解決策まで見いだせる。凄いモノを作ったもんだ」というお褒めの言葉を頂いた。それからほどなくして、会議の席で私が作成した資料が公開された。それ以降、私の元には、多くの病棟からデータベースの構築と分析の依頼がひっきりなしに舞い込んできた。併せて、認定医、指導医申請で使用するデータの取りまとめ、学会発表で使用するデータの使用許可等々多くの依頼申し込みがあった。私は、そのデータベースを14年間1日の漏れもなく入力し、4万件以上のデータを残して病院を去った。次の医療機関では、レセプト分析に取り組み診療科別売上、診療科別査定、医師別売上、生産性と幅を広げデータベースの作成と分析に明け暮れた。さらに、次の病院では、未収金管理データベースの作成を試み、未収金の発生から電話、郵送、督促の各記録、回収までを一元管理するシステムとして病院の未収金削減に貢献した。


このように、院内にあるデータは使い方次第では「財宝級」の代物に変わり、経営的に大きな影響を与えるだけのモノに変化する事を知った。


病院での勤務を辞し、経営コンサルとして企業勤務した際にも、担当する病院のデータベースを作成し、経営判断に大きな決断を迫られる経営者のサポートに努めた。数十の医療機関のコンサルに携わり、倒産に至ったのは1件…この1件は、こちらの改善策を受け入れてもらえなかった為に予測通り倒産の憂き目となった…それ以外は、全て何らかの形で経営改善が見られた案件となり高評を得た。


今、医療に必要なのは、従来の「勘と経験」による経営手法からの脱却であり、しっかりとしたデータを用いたエビデンス重視の経営手法に切り替えることである。データはしっかり入力されていれば、嘘をつかず、その時々の状況を客観的に表してくれる。ここで使うデータは、院内データのみではなく、院外に存在するデータも使用し、病院を取り巻く環境を裸の状態にして、病院が進む方向性を見出していくためのものである。


しかし、現代の働き方で、私が経験したような働き方は許容されず、人件費も上がっている。医療における利益率が良くて数%程度と考えれば、職員への過度な労働強制もできない。そんな入力作業をやるくらいなら他にもっとやって欲しい、やらなければならない仕事が山積している…という状況である。

ならば、しっかりとした情報保護契約を締結し、経営データを院外で取り扱い、客観的データとしてフィードバックしてもらえれば病院としても良いのではないか?と考えた。

病院職員でPC好きはいても、自分の仕事外でやることが出来る人間は多くない…いや、いないかもしれない。そう考えると、病院データを口外しないことを約束し、データの扱いをさせてもらえれば、院内データから多くのものが見えてくる。医事コン、電子カルテの普及で、データベースの基本部分は簡単に作成できる。

既存の職員を有効活用するためにも、この考えは病院のため(財産)になる…と考え、

「院外経営企画室」の運用を始めたのである。

これからの医療経営は、データが生命線になることは明白である。「データ経営」は、今まで医療界には馴染みのないマーケティングにも威力を発揮する。


多くの医療機関で、「院外経営企画室」の有効活用を検討頂きたいと思うのである。


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