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病院経営への想い

執筆者の写真: 宇野 重起
宇野 重起
9月29日
読了時間: 12分

目次

第1章        なぜ、いま「想い」を言葉にするのか

第2章        数字が示す現実−医療経営は「待ったなし」

第3章        私の原点−25年以上の病院現場経験から

第4章        想いの核心①−「成り行き経営」からの卒業

第5章        想いの核心②−「二輪経営」という考え方

第6章        想いの核心③−人材(人財)こそ、最大の経営資源

第7章        想いの核心④−データとエビデンス、「見える化」の力

第8章        想いの核心⑤−「待つ医療」から「地域へ出る医療」

第9章        UMM&Cが果たしたい役割

おわりに 地域と共に、次の半世紀へ

文中の数値・出典は公的統計・厚生労働省資料に基づいています。

 

第1章 なぜ、いま「想い」を言葉にするのか

医療は、いま静かな転換点に立っています。「待っていれば患者が来る」時代は、もう終わりました。

2025年、団塊の世代がすべて75歳以上となり、日本の医療は「多死社会」へと歩みを進めました。2040年には団塊ジュニア世代が高齢期に入り、生産年齢人口は今より1,000万人以上も減ると見込まれています。高齢化率は2040年に35.3%へ。医療の「量」だけでなく、医療に求められる「中身」そのものが、確実に変わっていきます。

この変化は、統計の話ではありません。地域の病院が、地域から必要とされ続けられるのか。そこで働く人たちが、誇りを持って働き続けられるのか。そして、私たちは患者さんとその家族に、何を約束できるのか。すべては、この問いに集約されます。

私は25年以上、病院という現場でこの問いと向き合ってきました。だからこそ、確信しています。医療経営は「経営の技術」だけでは立ちゆかないということです。制度も、数字も、データも、最終的には「誰が、何を想い、どこへ向かおうとしているか」によって動きます。

この一文は、そんな私たちの想いを、あえて言葉にしたものです。飾らない言葉で、医療経営に対する私たちの覚悟を綴りました。

「病院は、患者さんを待つ場所から、地域に出て、地域とともにある場所へ。 その転換を、私たちは経営の力で支えたい。」

UMM&C 代表 宇野 重起


2章 数字が示す現実 ― 医療経営は「待ったなし」

想いを語る前に、まず現実を見つめます。数字は、私たちが置かれている場所を、いちばん正直に教えてくれます。

1. 高齢化率は、2040年に35.3%へ

1990年に12.1%だった高齢化率は、2020年に28.6%。そして2040年には35.3%に達すると推計されています。日本の人口は減り続けますが、高齢者は増え、支える側はさらに減っていく。この「ねじれ」が、医療経営のすべての前提を変えていきます。


日本の高齢化率の推移(1990年〜2065年)

出所:総務省「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」をもとに作成(2040年以降は推計値)。

2. 生産年齢人口は、2025年から2040年で約1,100万人減

2040年問題の本質は、ある日突然人が減ることではありません。少しずつ、確実に減り続け、その積み重ねが1,000万人を超えるという点にあります。採用で人を集める従来の発想は、地方の医療機関から順に、通用しなくなっていきます。


生産年齢人口(15〜64歳)の推移と2040年に向けた減少

出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」をもとに作成(2025年・2040年は推計値)。

3. これから増えるのは、「85歳以上の医療」

2020年から2040年にかけて、85歳以上の救急搬送は75%増、85歳以上の在宅医療需要は62%増と見込まれています。増えるのは若年・中年層の一般急性期ではなく、複合的なニーズを抱えた高齢者です。私たちが当然視してきた患者構成・疾患構成・収益構造は、そのままでは維持できません。


2020年→2040年にかけての医療需要の変化(推計)

出所:厚生労働省「新たな地域医療構想を通じて目指すべき医療について」。

私たちの受け止め方

これらの数字は、悲観の材料ではありません。「どこに力を集中すべきか」を教えてくれる羅針盤です。需要構造から逆算して、自院の機能をあらためて設計する。それ以外に、生き残る道はありません。


 

第3章 私の原点 ― 25年以上の病院現場から

私の原点は、コンサルタントの机の上ではありません。病院の現場、事務方の最前線にあります。

25年以上、私は病院という組織の中で仕事をしてきました。

そこで見てきたのは、医療現場が持つ圧倒的な強さと、その一方で、「経営」という視点が驚くほど置き去りにされてきたという現実です。

診療報酬請求(レセプト)にも、医事の算定にも、相応の専門性があります。医療の進化に沿って、制度は年々複雑になっていきます。ところが医療機関の多くは、いまも事務職を「事務をする部署」として見ています。しかし病院経営という観点で見れば、事務職こそが「ヒト・モノ・カネ・情報」のすべてに手が届く、院内で唯一のポジションです。

私はこの現場の実感を出発点に、医療経営学を体系的に学び、MBA的な視点を身につけました。現場の肌感覚と、アカデミックな知見。この二つを併せ持つことが、医療経営の支援に携わる者に求められる力だと信じています。

経歴メモ(ご確認ください)

・25年以上の病院勤務経験を経て独立。宇野医療経営コンサルタント事務所(UMM&C)代表

・英国国立ウェールズ大学経営大学院にて医療経営学を専攻・修了、京都大学、九州大学のMBA単科コー

ス修了

・(株)日本医療経営研究所にて主任研究員・経営管理者塾塾長等を歴任(公開情報)

※本ドラフトの経歴欄は公開情報に基づく記載です。正確な年次・肩書きはホームページ内でご確認下さ

い。


 

第4章 想いの核心 ① 「なりゆき経営」からの卒業

いま、病院経営で最も危険な言葉は「これまで通り」です。

かつて病院経営は、一定の患者が来院し、一定の入院需要がある、という前提の上に成り立っていました。制度が変わっても、大きな方向転換までは迫られない。しかし、その前提は、いま崩壊しました。

「地域に必要とされているはずだ」「これまで何とかやってこられた」「紹介患者はいずれ戻るだろう」「病床は埋まるはずだ」。こうした感覚に依存する経営は、極めて危うい状態にあります。

受け身の経営が、気づくのはいつも「後」

1.     制度上の評価が下がった時に初めて危機に気づく。

2.     紹介が減ってから慌てる。

3.     看護師をはじめとするスタッフ採用ができなくなってから機能転換を考える。

4.     病床稼働率が落ちてから地域連携や在宅を口にする。

しかし、気づいたときには、地域内のポジションは、すでに別の医療機関に取られていることが多い。

これが、なりゆき経営の末路です。

「なりゆき」を否定するのではなく、“設計された方向性”へ転換する。問われているのは「存在していること」ではなく、「地域でどの機能を、どの水準で、どの連携の中で担うのか」です。

「前年踏襲」から、「需要構造」へ

経営判断の単位を、「前年踏襲」から「需要構造」へ切り替える。

これから増えるのは、複合的なニーズを抱えた高齢者、施設・在宅からの救急、退院支援を要する患者群です。自院が得意な医療を続けるだけでは足りません。地域で増える患者像に対して、自院の資源をどう再配分するか。そこが勝負になります。

救急、リハビリ、退院調整、在宅復帰支援、介護・施設連携。こうした機能は、これからますます経営そのものと直結していきます。


 

第5章 想いの核心 ② 「二輪経営」という考え方

医療経営の最終決定権は、医師免許を持った院長・理事長が担います。

だからこそ、その隣に「経営を担う者・サポートする者」の存在が必要になります。

医師の職務は「臨床」であり、患者の治療に当たることです。その臨床によって提供された医療サービスを、医師の労働対価として「カネ」に変えるのが、事務方の大きな使命です。病院経営という視点で見れば、事務方の業務のほとんどが、病院経営の基本情報になっているという事実があります。

一輪車は、バランスを取るのが難しく、少しの変化で倒れてしまいます。院長・理事長が臨床も経営も一人で背負う「一輪車経営」は、変化の激しい時代には通用しません。臨床の輪と経営の輪、二つの輪で走る「二輪経営」こそ、安定して前へ進む組織のかたちです。


一輪車経営から二輪経営へ ―「臨床」と「経営」の両輪で走る体制

作図:UMM&C「2輪経営」の考え方をもとに作成。

「No.2(黒子)」という、かけがえのない存在

一般企業の優良企業には、経営者の側に、必ずと言ってよいほど「No.2」と呼ばれる存在があります。

・ソニーの盛田昭夫

・京セラ・KDDIの伊藤謙介

・ホンダの藤沢武夫

・アップルのティム・クック

・ソフトバンクのマルセロ・クラウレ

これらの人は、No2として夫々の企業の発展に大きな役割を果たしました。

医療に於いても同じです。経営者が担うのは「最終判断」であり、その最終判断に至る精査済みのデータ

を見て判断する。そんな体制を築けるかどうかが、これからの病院の明暗を分けます。


 

第6章 想いの核心 ③ 人材こそ、最大の経営資源

「ヒトへの投資ができるか否か」。これが、生き残る病院とそうでない病院を分けます。

 

経営資源は、「ヒト・モノ・カネ」だけではない

経営資源は、かつて「ヒト・モノ・カネ」でした。やがて「情報」が加わり、最新の考え方では、七つの資源を管理する必要があります。これは医療以外の領域では常識ですが、医療においては、まだ「経営資源」という概念すら定着していない現場が少なくありません。


これからの経営資源 ― 管理すべき7つの要素

作図:UMM&C 事務長育成プログラムの考え方をもとに作成。

「できる人材捜し」から、「自前で育てる」へ

なぜ医療機関は「できる人材捜し」をするのか。それは、自前で教育できていないからにほかなりません。教育できないのではなく、「教育する術を知らない」という方が正解に近いのかもしれません。少子高齢化による人材難は明白です。だからこそ、生え抜きの人材を育てる。余剰人員など、一部の大規模医療機関以外には存在しません。ヒトを有効に活かす組織運営が、これからの命題です。

事務職を「マネジメントする部署」へ

事務職を「事務をする部署」として見るか、「マネジメントをする部署」として見るか。この違いは決定的です。日本中の医療機関の事務職に足りないもの――それは、「医学知識」と「経営知識」です。この二つをしっかり教育できれば、事務方はマネジメントできる部署へと生まれ変わります。


 

第7章 想いの核心 ④ データとエビデンス、「見える化」の力

これからの経営は、エビデンスで語らなければ、誰も動きません。

医療機関には、多くのデータがあります。院内のデータは、同じデータが複数の部署で加工され、一元化されていないことが少なくありません。院外には行政データやビッグデータが存在しますが、収集・分析にまで手が回らないのが実情です。

会議資料が、いまも数値と文字の羅列のままになっていないでしょうか。一般企業では当たり前になったBIツール(Business Intelligence Tool)で「見える化」する、AIを使った視覚的訴求力の高い資料を使用することで、会議参加者の理解度も、課題の緊急性も、まるで変わります。

従来の資料

「見える化」した資料

数値・文字の羅列で、傾向が見えない

グラフで傾向と異常が一目でわかる

部署ごとにバラバラなデータ

一元管理されたデータで、統一した目線

「なんとなく」の議論に陥りやすい

エビデンスに基づく意思決定ができる

 

データは、算定のためではなく、経営そのものの言語です。それを全職員が共通の言葉として使えるようにすること。これが、UMM&C支援の出発点です。院内・院外のデータを一元管理し、数値だけでなく可視化されたレポートとしてお渡しする。自院の経営に、実際に役立てていただく。私たちは、そこまでを一つの仕事と考えています。


 

第8章 想いの核心 ⑤ 「待つ医療」から、「地域へ出る医療」へ

時代は、変わった。これからのキーワードは「衣食住」から「医食住」へ。

人口減少・高齢化が加速するいま、医療機関に求められるのは、「待つ医療」から「地域へ出る医療」への転換です。自院の存在と想いを地域に積極的に発信し、認知を広げる。地域の声に耳を傾け、Needs(ニーズ)とWants(ウォンツ)を把握し、医療の在り方に活かしていく。

患者が増えなければ、売上も上がらない。売上が上がらなければ、経営が成り立たない。現代の高齢者の背景には、治療だけではない、多くの事象が存在します。医療と介護のシームレスな連携や終活への理解はほんの一部です。そのために、医療側も病院内で待つのではなく、積極的に地域に出て、自院の取組みや考えを発信する必要があります。それは広報であり、医療ブランディングの醸成でもあります。

地域活動の一例:高齢者向け勉強会

UMM&Cでは、社会福祉協議会・自治会と連携し、高齢者向け勉強会「介護にならないセカンドライフ」を実施しています。高齢者に大変好評で、年数回開催。全国で使える勉強会ですので、必要があればお声がけください。

人生100年時代、医療機関の役割は変わります。地域との連携を深めることで、真に「求められる医療」が実現します。病院は治療の場であると同時に、地域とともに生きるパートナーでなければなりません。待つ医療から、地域へ出る医療へ。それが、これからの医療機関の姿です。

これからの医療で必要なのは、「求められる医療」です。患者の求めに全て応じることはできません。制度の中で、いかに患者の求めに合う医療を提供できるか。それが、地域に選ばれ続ける病院をつくる第一歩になります。同時に、医療という社会インフラに他する患者理解も必要になります。この患者理解が「患者教育」という位置づけとして地域の中で醸成されるようにしなければなりません。


 

第9章 私の想い ― UMM&Cが果たしたい役割

医療機関の「経営」と「人」の、両方に伴走します。

各種データ分析から人材育成、BIツール、AI導入まで。UMM&Cは、病院経営に必要な施策を一体で提供します。豊富な経験とエビデンスを重視し、絵に描いた餅にしない支援を提供いたします。

領域

主なプログラム

想定対象

経営分析・データ

院外経営企画室/各種データ分析(経営分析含む)/BIツール体験講習/査定分析代行

中小医療機関〜大規模医療機関、個人クリニック

人材育成

病院管理者育成プログラム/事務長育成プログラム/医事課長育成プログラム/医師事務作業補助業務サポート

院長・理事長・事務長・医事課長・各責任者候補

改革・導入支援

病院改革総合プログラム(代表が院内に常駐)/AI導入勉強会/顧問契約

院内全職員(メインは管理職者)

院内・地域活動

病院経営勉強会/医学知識勉強会/各種院内勉強会/地域高齢者向け勉強会

院内各種職種、地域住民

 

私たちのスタンス

•      エビデンスを重視し、データで語る。

•      25年以上の現場経験に基づき、実行できる施策にこだわる。

•      「ヒト」を育て、契約終了後も自院で自立できる体制を残す。

•      各種リモートを含め、全国どこへでも対応する。


 

おわりに 地域とともに、次の半世紀へ

私たちは、いくつもの「山」を越えていかなければなりません。


私たちが越えていく「山」 ― 2025年・2040年・2050年・2054年問題

作図:UMM&C代表のブログ「少子高齢化の病院経営をどう考えるか?」の整理をもとに作成。

2025年問題、2040年問題、2050年問題、2054年問題。そんな状況下でも、医療は地域における必要不可欠な存在として、存続していかなければなりません。そのために必要なのは、制度に受け身で適応することではありません。自ら将来像を定め、先に動き、地域の中で「必要な機能」として選ばれること。

病院が「過去の延長」で経営するのか、「未来から逆算」して経営するのか。その分かれ道に、いま私たちは立っています。この想いに共感してくださる医療機関の皆さまと共に歩んでいきたい。それが、UMM&Cの変わらぬ願いです。

うまく適応するだけではなく、自ら未来を設計する。 その一歩を、私たちは現場でご一緒します。

UMM&C 代表 宇野 重起

 
 
 

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